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したてる

京表具はどんな材料を使って、どのように作るのか。
掛軸や屏風を例に、その仕立て方を紹介します。

掛け軸に用いる主な材料



裂地(きれじ)
本紙の周囲に施される絹の織物。掛軸全体の調和・雰囲気・品格・芸術性のすべてを決定する重要な材料です。織物は織りの組織によって、平織り・綾織り・繻子織りの3種類に大別され、それぞれ厚みや文様の織りだし方が異なります。掛軸は巻いて保管するため、用いる裂地は厚手より薄手のものが望ましく、文様を緯糸(よこいと)で表したものが多く見られます。主な裂地は金襴・銀襴・緞子・錦・印金・間道・紗金・金紗・魚子(ななこ)絓(しけ)・紹巴(蜀巴) ・海気(かいき)など。京表具の裂地は主に西陣織です。

織物の基本的な組織

平織り
平織り

綾織り
綾織り

繻子織り
繻子織り

主な表装用裂地

金襴 ex.
銀襴
緞子

印金
間道
紗金

和紙(わし)

幅の掛軸をつくる際、通常、肌裏打ち・増裏打ち・総裏打ちの3回の裏打ちが行われます。それぞれの裏打ちには異なった和紙(コウゾを原料とする紙)が用いられ、それらの特性が相まって掛軸特有のやわらかさや丈夫さが生み出されるのです。
     
●肌裏打ち…薄美濃紙
精密で腰が強い(岐阜県美濃産)

●増裏打ち…美栖紙(みすがみ)
胡粉入りで柔軟(奈良県吉野産)

●総裏打ち…宇陀紙(うだがみ)
白土入りで滑らか(奈良県吉野産)

※美栖紙と宇陀紙は、表具だけに用いられる特別な和紙です。

古糊(ふるのり)

表具制作では小麦デンプンに水を加えて炊いてつくった「新糊」と、新糊を床下などの冷暗所で7〜10年かけて発酵させて接着力を弱めた「古糊」を、工程によって使い分けます。
新糊は肌裏打ちや付け廻しに、古糊は増裏打ちや中裏打ち・総裏打ちに用いますが、なかでも古糊はやわらかな仕立ての大きな要因となるだけでなく、本紙や表具部分の傷みを直す際に裏打ち紙を剥がしやすくして解体を容易にするという、重要な役割を担っています。